モードと身体―ファッション文化の歴史と現在 (空間演出デザインシリーズ)

高校生から６５歳までの女性１０００人では、好きなところは、目、口、鼻と続く。嫌いな方は鼻、目、口、眉と続く。好き嫌いの理由による全体像をまとめると、「目が二重で、鼻は高く、口は小さく形がよい。眉は形良く、小さな顔」となる。そこからのイメージは「かわいい」顔らしい。この本はこのように、私達（私？）が普通接しない「受けてみたい美容整形の順位」「「年齢別ピアスの着用率」「年齢別染毛率」などから、異性装、タトゥーや入れ墨、ヘアスタイル、天皇と皇后の衣服、ファッション理論・モデル・産業、バロックやロココ時代のモード、マリーアントワネットの装飾とローズ・ベルタン（モード商人）の活躍、ボッチョーニ（未来派）の作品「空間における持続の独特の形態」（１９１３年）からナチズムへの道、日本の着物などの前開型や韓国のチマチョゴリの体形型など民族服の分類、埴輪がはいてるのはスカートかズボンか、など、普通教科書などで見る切り口とは全く異なった視点からの人類の文明全体に係わったすごい本である。身体と社会と言う視点を導入したとの序で、今までのファッションと言えば服飾を中心とした議論が中心から、それをまとう身体に対する身体感が大きく変わってきていることに焦点を当てている。この延長上には身体を装飾・加工・修正する行為、臓器移植、遺伝子操作、摂食障害、性同一障害、性転換、少女売春、ＡＩＤＳ、クローンなど様々な身体感（価値観）が生じてきたことにも触れている。各章の具体的なトピックも面白いが、序ではファッションとは「時間」と「空間」という二つのカテゴリーを通し、身体に意味を与える実践であり、衣服が身体を可視化する技術であり、身体がファッションになり、ファッションが身体となる、と非常に哲学的でもある。１８世紀フランスの博物学者Buffonの「Le style est l'homme même 」（文章は書き手の考えや性格、人となりをあらわす）を彷彿させる。特に「西洋ファッションの歴史」は、ローマ、中世、ルネサンス、バロック、ロココなどのモードと比較しながら見ると、これまた実に面白い。